Call My Name

本を鞄の中に突っ込むと、長い長い息を吐き出した

ふっと肩の力が抜ける

それで気がつく

俺の身体に力が入っていたというのことに…

「ちょっと、立宮弟っ! その顔は帰る気でしょ」

「あ?」

俺の腕をぐいっと引っ張った女の声に、俺の眉間にしわが寄る

んだよ…帰ろうとしてねえし

腕に絡みついてきたサキの胸に視線がいく

俺がつけた赤いキスマークが目に入る

やっぱ…別になんも感じねえ

サキが、俺の腕に胸を押し付けてくる

胸の谷間が寄るのが見えた

「ボックスに戻るっつうの」

「ああ、ちょっと待って。戻る前にあっちに行こ」

サキの指先が、明るいネオン街へと向けられる

ホテルがわんさかある場所に目をやると、俺は首を横に振った

「行かねえよ」

「だって、行ってくるって皆に宣言しちゃったもん」

「アホか」

本屋の看板の照明が落ちる

俺とサキの立っている地面が、一気に暗くなった

だから…わかった

スイレンが、店内からこっちを見ているのに…俺は気づけた

すごく切なそうな…それでいて悲しい瞳で俺を見ている

俺はぱっとスイレンから目を逸らすと、サキの腕を振り払った

「…ったよ。行けば、良いんだろ。行けば」

俺は大股で、歩き始める

「やったー」

サキが嬉しそうに声をあげると、俺の肩に抱きついてくる

「やめろっつうの!」

まとわりつくサキの腕や手を振り払いながら、俺はネオン街へと足を進めた

ただ…スイレンの瞳から逃れたくて…