Call My Name

「お嬢様、今日のメニューでございます」

俺はメニュー表を広げて、スイレンに渡した

「あ、はい…」

スイレンの細い指で、メニュー表を掴む

「『執事の愛のケーキセット』ってなんだよ…キモい、ってか、寒気が…鳥肌がぁ」

ツバキが腕を擦りながら、身を震わせた

「お決まりになりましたら、お呼びください」

俺は営業スマイルで笑顔を見せると、キッチンのほうへと歩き出した

「あ…ケイ、今日はシフト入ってたんだぁ。会えて良かった」

他のテーブルに座っていた女性に手首を掴まれると、手のひらに箱を乗せられた

「聞いたよぉ。貰ったチョコの数で、給料の基本給が変動するって。だから、これ!」

「ありがとうございます」

俺はにっこりとほほ笑むと、チョコの入った箱を持って、キッチンに入った

なんか…やりにくい

俺を知っているヤツが近くにいると…なんか笑み一つでも緊張する

「あ、いいなあ。ケイ、チョコゲットしてる」

バイト仲間の男が、羨ましそうに見てきた

「おっ、立宮も意外とやるわねえ。レンのぶっちぎりかと思ったけど、立宮とレン…同数だよ」

オーナーの優香さんが、キッチンで丸椅子座って、大きな画用紙に俺のチョコの数を書きこんでいた

「給料アップ、お願いしますよ」

俺はチョコを、自分の名前が書いてある棚の中に置いた

こんなチョコなんて、いらないけどな

欲しいのはたった一つだよ

俺は振り返ると、テーブルに置いてあるメニュー表を見ているスイレンの横顔を見つめた