Call My Name

「…ってーな」

「可愛いくなくていいんだよっ」

「ああ、そうかい。兄貴は、ツバキから手作りチョコを貰えるって、先週から浮かれっぱなしだったぞ」

「あ…いや、んな…手作りなんて言ってねえし。渡すなんて、一言も…」

俺は『ぷ』と噴き出すと、ツバキの髪をぐしゃぐしゃにしてやった

「ツバキは素直じゃねえからなあ。だけど言動はわかりやすい。態度とは逆の場所に心があるからな」

「髪を乱すな!」

俺は『あはは』と笑いながら、ツバキの髪をさらにぐしゃぐしゃにしてやった

ツバキの後ろから視線を感じて、俺はふっと顔をあげる

スイレンと目が合った

スイレンはパッと逸らすと、ナデシコの影に隠れるように立った

嫌われたか?

俺はスイレンに微笑んでから、店内に目を移動させた

「来んな…ってあれほど言っておいたのに」

菅原の低い声が、俺の横で聞こえてくる

「だって…見てみたかったから」

瑞那が、菅原のシャツを掴んで頬を膨らませていた

微笑ましい光景だこと

俺はあいているテーブル席を見つけると、ナデシコたちを案内した

「お前が執事だなんて…有り得ねえ」

ツバキのぼそっと吐き出した言葉を俺の耳が捉えた

「兄貴のほうが似合うってか?」

「はあ? こんなバイトしてたら、即効別れてヤル」

「別れられないくせに。兄貴は優しいけど、こういう店は似合わないだろ」

俺はスイレンが座る椅子を引いた

「あ、お前らは勝手に座れよ」

「ああ? 客だぞ」

「俺に椅子を押してもらいたいか?」

「嫌だ。自分で座る」

ツバキが『げー』と吐く真似をしながら、一人で椅子に座った