Call My Name

「親父、組を継ぐ。20歳の誕生日に襲名するのはわかった。だけど、嫁はいらない」

「景…独身で襲名した奴はいないんだぞ」

「それは無理やり見合いしてきたからだろ? 俺はいらない。独りでいい」

「決めた女がいるのか?」

「どうかな?」

俺は冊子を親父につっ返した

「組に相応しい女か?」

「どういう基準で、相応しいのか相応しくないのか…決定するのかが、俺にはわからない。だけど、相応しいとは言い切れない女性だよ。だから独りでいい」

「景…組を継ぐというのは、独りで出来るものではない。お前は後継者をつくる責任もあるんだぞ」

「わかってるよ」

「なら…」

冊子がまた俺の膝もとに戻ってきた

「まだ…無理だよ。俺には、気持ちの整理ができてない」

「景っ」

親父の低い声が、俺の心に突き刺さってくる

俺は見合い写真を手に取ると、立ちあがった

「いずれは見合いをする…それならいいだろ。今は嫌だ。どの女とも、寝たいとも思わねえよ」

親父が小さくほっと息をついているのが、わかった

「景、夕食は?」

「いらねえよ。もう帰る。誰か車を出してもらうように手配しておいて」

俺は大股で、親父に背を向けて歩き出した

見合いか…それもいいかもな

スイレンと一緒になれないのに、いつまでも心に留めておいても…意味がねえ

だけど心と体が、考えることが違うんだよな

心は、スイレンと離れたほうがいいと訴えてる

身体は、スイレンが欲しいと叫んでる

面倒な肉体と精神だよ