「スイレンに手を出してないだろうな?」

ツバキが俺を睨み、低い声を出した

「はあ?」

俺は思わず大きな声で、聞き返してしまう

喉の奥を鳴らすと、ブレザーの皺を伸ばしてから、袖を通した

「アホか」

俺が呟くと、ツバキが今度は俺の首を絞めてきた

「お…おいっ。く、くる、し」

俺はツバキの手首を掴んだ

「スイレンは凄く良い子なんだ! お前、手を出してないだろうな? おい、答えろ」

ツバキの目がマジだ

スイレンは、ツバキに大事にされてるんだな

俺は思わず自嘲の笑みを浮かべた

少し羨ましい

俺には…ないから

誰かに大事に思われるなんて……

「で、どうなんだよ! 弟っ」

俺はツバキの腕を叩く

「首! 手!」

俺は苦しい呼吸の中で、必死にツバキに訴えた

「あ、わりぃ」

ツバキの手が俺の首から離れると、俺は激しく咳込んだ

「苦しいんだよっ。殺す気かっ!」

「一度、死ね。うすら禿げ」

「禿げてねえだろうが! これのどこが禿げてんだよっ」

「金髪だから、禿げてるように見えんだよ」

「意味わかんねえだろ」

「プリン!」

「ああ?」

俺はツバキの言葉に、眉を寄せて聞き返した

「あんたの頭がプリンなんだよ。染め直せ」

「うるせえよ。今日、染めんだよ」

俺ははっとすると、教室に目をやった