Call My Name

「来週のバレンタインに、ツバキがチョコを作ってくれるみたいなんだ」

「はあ…それで?」

「それだけ」

「は?」

俺は眉に力を入れて、窓に寄りかかっている態勢を変えた

きちんと座りなおしてから、兄貴の横顔を見つめる

兄貴の表情はさらに、緩んでいる

「だから、チョコを僕は貰えるみたいなんだ」

「バレンタインだからな。そりゃあ、貰えるだろ」

「ああ、わからないかなあ? ツバキが僕のために、チョコを作ってくれるみたいなんだよ」

「で?」

もしかして、嬉しいことってそれだけか?

付き合ってる女からチョコを貰えるってことが、そんなに嬉しいのか?

つうか、兄貴って毎年、大量にチョコを貰ってるだろ

生徒とか、大学の頃の友人とか…

手渡し以外にも、郵送で送られてくるとか…ツバキの手作りチョコってだけで、そんなに顔を緩ませることなのか?

「ツバキは料理がしたことがないんだ。なのに、僕のために…」

「あーはいはい」

俺は耳の穴に小指を突っ込むと、適当に返事をした

「景、聞いてる?」

「聞いてるよ。ツバキがチョコをくれんだろ」

「手作りを、ね」

兄貴の顔が幸せそうに笑った