俺が教室に戻って、次の授業の教科書を用意していると、スイレンが俺のブレザーを持って教室に入ってくるのが見えた

「スイレン、急に教室を飛び出してどうしたの?」

綺麗な顔立ちのナデシコが、教室に戻ってきたスイレンを見つけるなり、駆け寄っていくのを俺は眺めた

ナデシコの後ろから、ツバキもついてくる

仲、良いよな…あの三人は、さ

ツバキが、スイレンの手にあるブレザーを奪うように手に取ると、胸ポケットの裏にあるネームを確認する

やべえ…ツバキにバレた

俺はさっとツバキたちから視線を逸らすと、知らないふりをする

…が目の端に映っているツバキが、どんどんと近づいてくるのがわかった

「おいっ! ちょっと来い」

ツバキが俺の机を思い切り叩くと、俺の腕を掴んだ

「…んだよ」

俺がツバキの腕を払った

『ちょっと…ツバキが立宮弟に喧嘩売ってるよ?』
『やばくない?』
『ツバキが怪我しちゃう』

女子たちの悲鳴のような声が耳に入る

俺はため息をつくと、席を立った

「腹が痛いって言って具合悪そうにしてたから、ブレザーを貸しただけだ」

俺はツバキに口を開きながら、教室を出る

廊下の窓際に立つ俺に、ツバキが胸倉を掴むとブレザーを顔面に叩きつけられた

「何…すんだよっ」

ツバキの目が怒ってる

相当、機嫌が悪そうだ