短編集 cafe an

谷原さんは
大きく体を震わせる


私は
ソーサーを落とさないように
細心の注意を払った



「なんとか言ったらどうなんだ!?

俺のとのことは
何も考えてないのか?」


切実な声


ついに
谷原さんのほほを
一筋の涙がつた立った



「…私だって
あなたとの将来をきちんと
考えてるわ。

でも

今の仕事から
離れるのだけは…できない。」




溢れる涙をぬぐうこともせず
谷原さんはまっすぐ
男性を見つめている


ピンクのルージュが光る唇が
力強く
一文字に結ばれていた



「じゃぁ…
悦子は俺よりも、仕事を取るんだな。」


今度は
男性の顔が一気に悲しみに包まれた



「…あなたのことは
愛してる。…でも…。」



苦痛にゆがんだ
谷原さんの表情を見た時

私の体は勝手に動き出していた