ある晴れた日、お日様が真上に登るころ

メルは公園に遊びに来ました。

美味しそうなお弁当と大きなブルーシートを持った家族が目立ちます。

メルは横目でそれを見るとなんでもないように

近くのベンチに座りました。

ほんの少し前を思い出します。

「公園は危ないから近寄ったらだめよ?」

「どこに行くの?」

メルはずっと、お母さんに、あれも危ないこれはだめと言われ、いつも我慢するのが嫌になったのです。

そして今日、初めてお母さんの言いつけを破りました。

これといった危険はありません。しかし、

近くで笑いながらご飯を食べる家族が、メルには眩しく映ります。

“いいなぁ”

メルのお父さんは単身赴任でほとんど家にいません。

お母さんは体が弱く、“家族の為”が口癖でした。

そんなメルは笑うことはあまりなく、いつも冷めた目で物を見ていました。

友達の家族が羨ましくて、遊びに行くたびに

“どうして私の家にはゲームがないんだろう?”

“お母さんが車を運転出来ないから遠くに遊びに連れて行ってもらえない”

“どうしておもちゃは買ってもらえないの?”

“どうして私だけお手伝いしないとだめなの?”

“どうして夜、友達と花火大会に行けないの?”

危ないことは一切だめ

お手伝いは当たり前

口答えはもってのほか

息が詰まりそうでした。

メルは閉ざされた世界から羽ばたきたくて、でも、出来ないことを知っていました。

メルは涙が溢れてくるのを感じました。

慌てて下をむきました。

メルが家を出る時、お母さんが悲しそうな泣きそうな顔をしていたのを思い出したからです。

メルはお母さんにそんな顔をさせた自分が嫌になりました。メルはお母さんにはいつも笑顔でいてほしいからです。