初恋タイムスリップ【完】

男の子は成海くんに抱きついた。

「優、ただいま」

成海くんは男の子に優しく言った。


「弟くん?」


「あぁ。俺の弟の優(ゆう)幼稚園の…今度年長」

「こんにちは。優くん。
いくつ?」


優くんは不思議そうに私の顔をじっとみた。

「美音…優は耳がちょっと聞こえにくいんだ。

ゆっくり少し大きめの声で顔を見て話し掛ければ伝わりやすいから。



お姉ちゃんが、

何歳?

だって」


優くんは成海くんの顔をじっとみた。


そして私を見て

「5たい!」


とニコニコの笑顔で答えた。

笑顔が成海くんそっくりで笑ってしまった。


優くんが私の手をとってリビングへ引っ張っていった。


広いリビング…


キッチンでは成海くんのお母さんがお昼ご飯を作っていた。

「こんにちは」

私は少し緊張して挨拶をした。

「こんにちは!いらっしゃい!座って座って!

お昼ご飯タラコスパゲティーでいい?

うちの子たちの大好物なの。美音ちゃんも好き?」

私の名前を知っている…


「好きです!私手伝います!」


「そんなたいした料理じゃないから。

でも…じゃあ、海苔細く切ってくれる?」

「はい!」


私は成海くんのお母さんとキッチンでお昼ご飯の用意をした。


カウンターキッチン、いいな…うちは昔からの「台所」って感じだから全然違う。


私たちがキッチンにいるのを、うれしそうに成海くんが優くんと遊びながら見ていた。


「うちは息子二人でしょ?だから娘ができたみたいでうれしい!!

良からね、ピアノが上手で、かわいい『美音』っていう彼女ができたって聞いてね。私うれしくってね。
早く会いたい、早く会いたい!って思ってたの。
今日くるならもっとちゃんとしたご飯にすればよかったわね。ごめんね。」

「そんな…突然おじゃましてすみません」


お互い顔を見合わせて笑った。


お母さんと料理ってこんな感じなんだ…

初めての感覚だった。