「美音は美音の道を…」

この言葉…
お母さんのお葬式の夜にお父さんが言った言葉だ。

もっと早くに伝えたかった…てあの時言ってた。


お父さん聞いたよ。




明日から春休み。

たった一年の修正期間。
一日一日を大切にしなくちゃ。

毎日、成海くんに会いたい。


そうだ、毎日会おう!

陸上部は毎日午前中練習だから、会いに行ってみよう!


そう決心して眠りについた。





朝目覚めると、過去へ戻った事が夢だったんじゃないかと不安になり、すぐに起き上がり自分を見て部屋中を見渡し…まだ過去にいることを確かめた。


まだ過去にいる


お…お腹すいた。

そういえば過去に戻ってから一度も食事をしていない。

階段をおりて洗面所で顔を洗い、お母さんがいないことを祈ってからリビングを見た。

やっぱりお母さんがいつもの椅子に座っていた。


お母さんと食事と考えると、いろんな思いがよぎる。

でも、ちゃんと自分の気持ち伝えなくちゃ。


私はお母さんの前に座った。

お母さんは、パックに入った惣菜を私の前にどんどん大量に並べていった。

「残したら許さないわよ」
お母さんはうっすらと笑っていた。

私は自分の食べられるだけの量を食べて、ほとんどを残した。

そして

「私、こんなに食べられない」

今まで絶対に言えなかった言葉を思い切って言ってみた。

お母さんは私をにらんだ。

「美音…あんた昨日からずいぶんな態度ね」


「お母さん、いつもご飯をありがとう。でも……」


お母さんは残した惣菜をパックごとシンクに投げつけた。

「美音!子供は親の言うとおりにしないといけないって決まってるのよ!それを!そんな反抗的な態度をとるなんて!
あんたの顔…もう見たくないのよ!出て行って!!早く!!」


お母さんはまた狂ったように泣き叫んだ。



私は自分の部屋に戻って制服を着た。

お母さんを変えるのは難しいな…

自分の気持ちをぶつけるだけじゃダメだ。どうしたらいいんだろう。
悩みながら髪の毛をとかした。