お母さんと一緒に朝ごはんの片付けをした。


「お母さん…」


私はお母さんを覗き込んだ。


お母さんは何も答えず、黙々とお皿を洗っていた。


私は洗ったお皿を拭いて食器棚に戻した。


すべて終わると、お母さんは無表情のまま部屋に戻って行った。



どうして何も話してくれないんだろう…


でもこのままいけば、きっと話してくれる時がくる気がする。


焦らない

焦らない。




今日は体育祭の振替で学校が休み。



さて…

受験生は勉強しなくては。


私も2階の自分の部屋に戻った。




机の椅子に座って、壊れたグランドピアノのオルゴールを持った。


バラバラになった脚やフタを接着剤でくっつけたけど、

ネジや中の細かい部分は直せなくて、

音は鳴らないまま。





また…音を聴きたいな…





トントン



「美音」


お父さんだ。



私はドアを開けた。


「成海くんが来たぞ」




「え!!」


私はお父さんを追い抜いて階段を勢いよく駆け降りた。



ちょっと。


ちょっとその前に、

洗面所に入って顔を見た。



あぁ…今日の顔は…



ひどい…





俯きがちに玄関へ行き、ドアを開けた。



「美音?どうした?」



成海くんが私の顔を覗き込むから、私はさらに下を向いて、髪の毛が顔にかかるようにした。


「ちょっと…」



成海くんが私の顎に手をあてて、自分の方に向かせた。



「泣いたのか?」




その時、玄関のドアがあき、成海くんはパッと手をはなした。


「そんなところで話してないで、美音、自分の部屋に入ってもらいなさい。

今日、母さん体調がいいみたいだから、外に連れ出してみるよ。

成海くん、ゆっくりしてきなさい。

父さんも母さんとデ−トだ」


お父さんはうれしそうだった。