朝
まぶたが痛いほど、目が腫れていた。
ひどい顔…
洗面所で、目が腫れて頬に傷のある顔を見て、ため息をついた。
そっと顔を洗い、髪をとかし、リビングをのぞいた。
お母さんが朝ごはんを作っていた。
お母さんが食事を作っていると思うと、また恐怖心がわいてくる。
隣にお父さんが来た。
お父さんも驚いている。
「まぁ…座るか」
お父さんはそう言って、食卓の椅子に座り、持っていた新聞を広げた。
「美音も座りなさい」
お父さんが新聞の上から顔を出して言った。
「…うん」
私もドキドキしながら椅子に座った。
お母さんは無表情で手際よく朝ごはんを作っていた。
しばらくすると、
お母さんは机の上に、おかずをならべだした。
そして一人ずつに箸と小皿をだし、
それぞれの茶碗とお椀を空のままだした。
そして、
私にしゃもじを渡した。
自分でよそれって事…
お母さんは何も言わず無表情のままだった。
「そうだな。
みんな自分でよそろう」
お父さんが茶碗を持って立ち上がった。
「ほら、美音がしゃもじを持っているんだから、美音が1番だ。
早くよそってくれ。
父さん腹へったよ」
お父さんに促されて、私は自分で食べる分だけを茶碗によそった。
次にお椀にお味噌汁をよそり、
食べる分だけ小皿におかずをとった。
最後にお母さんも自分でよそり、
みんなでお母さんの作った朝ごはんを食べた。
お母さんの作ったご飯を、ちゃんと味わって食べたのはいつぶりだろう…
「母さんの味噌汁には、やっぱりかなわないなぁ」
お父さんがうれしそうに言った。
お母さんはやっぱり、無表情のままだった。