成海くんのお父さんが近づいてきた。


「見てごらん。
このカルテは、美音ちゃんが生まれる、11年前から始まっている。

これは

どうしても赤ちゃんが欲しい、

どうしても美音ちゃんが欲しいと頑張り続けた、

お母さんの記録だよ」




お母さんが


私を…?



「母さんは美音が生まれた時、泣いて喜んでいたんだよ」




お父さんがお母さんの顔を見た。




そうなんだ。



私は



望まれて生まれてきた子なんだ。





そうなんだ…






痛みを我慢して、私は体を起こし、お母さんを見た。



お母さんは無表情のまま、私の側にきた。




そして、私の頬の傷の下に手をあてた。




「お母さん…」


ずっと無表情なまま、頬をなでていた。







「お母さん



私を生んでくれて




ありがとう」




ずっといえなかったこの言葉。







お母さんはずっと無表情のまま、私の頬を撫で続けた。