私は白地に色んな色の蝶の模様が入った浴衣にした。


お母さんの浴衣は、黒地に花の柄が入った浴衣。



お父さんが選んでいた。




二人また、暑い駐車場へ出て、サウナのような車に乗って帰った。


だんだん涼しくなる車内。



お父さんはうれしそうに話し出した。


「母さんと初めてデートしたのが、花火大会だったんだよ。」



「そうだったんだ…」




私は買ってもらったジュースを飲みながら話しを聞いた。



「母さんは浴衣を着て待ち合わせの駅に現れて、
とても綺麗だった。

その時来ていた浴衣に近い浴衣が買えたから、よかったよ。

着てくれるといいんだけどな」




「お母さん、きっと着てくれるよ!

最近お母さん部屋から出てくるようになったし、

私とごはん食べるようになったし、

前みたいに癇癪起こさなくなったし、

お母さん変わってきたよ。
お父さんがお母さんに一生懸命やってあげているからだよ。

お母さんきっと、元のお母さんに戻るよ」



お父さんは笑って、

「そうだといいな」

ぽつりとつぶやいた。




車は駅前通りに曲がった。


混んでるな…



あ、私の働いている音楽教室だ。


なんか看板がちょっと綺麗だな。



車から外を眺めていたら、音楽教室のならびのビルから、男2人、女2人の4人グループが出てきた。



…Sゼミナール…塾?



出てきたビルの看板を見た。



車は渋滞にはまって、ノロノロ運転。

じっと通り過ぎる4人を見た。




男の一人は、成海くんだった。