初恋タイムスリップ【完】

「今の若い子が何がいいのかわからんから、

お金を渡すしかできなくてごめんな。

何か好きな物を買いなさい。

お金のことは心配するな。
貯金もあるし退職金もでることになっている。

大丈夫だ。

母さんが落ち着いたら再就職することになっている。

近所のA事務所知っているだろう?

社長さんが理解ある人で雇ってくれる事になっている。
美音は何も心配しないで

美音の道をいきなさい」

お父さん…

「お父さんがそばにいれば、きっとお母さん元のお母さんに戻るよ!」

お母さんが亡くなってから、毎日仏壇に生花を切らさないように飾ってきたお父さんを、私はずっと見てきた。

そのお父さんの優しさが生きているうちにお母さんに伝われば…


お母さんはきっと元のお母さんに戻るはず…

違う未来になる。


「お父さん、ありがとう」


「…おやすみ」



「おやすみなさい」



お父さんは静かにドアを閉めた。





4月2日。

私の15歳の誕生日。


成海くんに会いに、歩いて学校のグラウンドへ行った。


階段に座っていると、成海くんが荷物を持って走ってきた。

「美音、誕生日おめでとう」

「ありがとう…もう終わり?」


「終わりだよ。いこうか」


成海くんは、私の手をつないだ。


「今日さ、家、誰もいないんだ」


「そうなんだ」



「美音、メシ作れる?」


「え…簡単なものなら」

「簡単でいいよ」


「うん」


簡単な物っていったけど 、冷蔵庫勝手に見ていいの?

どうしよう



悩んでいたら成海くんの家についた。



「はい」

成海くんにエプロンを渡された。

「俺着替えてくるから」

成海くんは自分の部屋に行ってしまった。


恐る恐るカウンターキッチンの中に入ると


《美音ちゃんへ
遠慮しないでなんでも好きに使ってね》



成海くんのお母さんからの置き手紙があった。