初恋タイムスリップ【完】

いつもの椅子に、お母さんがいなかった。


お母さん…?


お母さんの寝室のドアを開けようとした。

鍵がかかっている…

まさか…自殺…!


ドンドン


「お母さん!お母さん!」


私は必死になってドアを叩いた。


「もう!ほっといて!」


中から声がした。


生きている…

よかった…


「お母さんただいま…」


中から返事はなかった。








春休み、毎日成海くんに会い、成海くんの家に行ったり、優くんも一緒に公園にいったりして過ごした。


お母さんは、私が家にいるときは、部屋から出てこなくなった。





久しぶりにお父さんが帰ってきた。


夜中、私の部屋を叩く音がした。


お父さんだ。


お父さんを部屋に入れ、私が家にいるときはお母さんが、部屋に鍵をしめて出てこなくなったと言った。

「そうか…。困ったな。美音は大丈夫か?

母さんの事は少しそっとしておきなさい。

あまり刺激してもよくない。

美音は今、青春時代を謳歌するんだ…って言葉が古いな」


お父さんは笑った。


「美音、お父さんは会社を辞めようと思う」


「え!」


来年の2月にリストラされるのに…その前に?


「美音。しばらく再就職しないで、母さんのそばにいてあげようと思っているんだ。

美音は今度受験生って大事な時期に悪いんだが、

母さんのことをちゃんとしてやろうと思う。

美音に『一緒に協力してお母さんを元のお母さんに戻そう。』って言われて気づいたよ。美音ありがとう。

明日誕生日だな。
一日早いけど、おめでとう」