あの時、荒岡のバッグにカエルのキーホルダーを入れたのだ。
留美のケータイを盗ったのは荒岡だと思わせるために。
荒岡に罪をなすりつけようとしたわけだ。
もちろん、思わずやってしまったことだ。
今日の留美が元気がなかったのは、罪悪感からだ。
留美は、悪い奴ではないから。
先輩が手に持っている、留美のケータイを指さす。
留美が驚いて私に目で問いかけてきた。
「先輩は、ケータイを盗るつもりはなかったはずだよ。留美に、中途半端なメールを送ってしまったから、それを消したかっただけ。」
「……先輩が……?……メール?」
「そ。先輩は、留美に伝えたいことがあったんだよ」
「……?」
「先輩は私のことなんか、なんとも思ってないよ?留美のかん違い。先輩が好きなのはね――」


