「いや、志波さんを特別扱いした覚えはない」 樹市子は少し考えてから言った 志波恵はN大学院3年生の建築学部ドクターコースの人間だ 日下部とは関わりがあるが、入澤と樹市子とは関わりがない それはまた別の話でもある 他人に無関心の樹市子が、少しでも志波さんを気にしたってことは、少しは特別な感情があるからではないか 「だって樹市子くん、志波さんの話をする時顔がるんるんしてるもの」 「るんるん?」 「いや、らんらんって感じかな」 「らんらん?」