夏の空の虹

階段を降りて

こぼれそうな涙を堪えて

笑顔で食卓に行った。

それを見るなり

「うまそっ」

一言いった。

お母さんは嬉しそうに笑って

『じゃあ、食べよ』

『いただきまーす』

一口食べたら

懐かしいはずのカレーライスは

懐かしくなかった。

無性に悲しかった。

病院食に慣れてるせいだ。

でも

「なつかしー味」

そう言った。

お母さんは

気付いたのか

気付かないのか

分からないけど

『そうっ、良かった』

家族で食べる最後の晩飯のはずなのに

まだ明日も明後日も明明後日も…

食べられる気がした。

泣きたくなって

涙を堪えた…とたん

苦しくなって

息が上がった。