夏の空の虹

「うっ…うっ…」

─トントンっ

ドアを叩く音がした。

バレるっ。

とっさに拭ったけど

それだけじゃ、追いつかない。

溢れた涙は床に水溜まりを作る。

─ガチャっ

潤んだ目に映ったのは

一輝だった。

『にぃちゃん…?』

あー

兄貴が泣いてるなんて

情けない。

「一輝か…何?」

不安な顔をしていた。

ごめんな

情けない兄貴で…

『何…で…泣いてるの?』

「ははっ。いろいろなっ。一輝?」

俺は言わないといけないコトがある。

『えっ?何っ…?』

「あのな…っ

もし俺が…っ

いっ…なくなっ…たら

かずっ…きがっ

俺の変わりに…

父さんと母さんっ

支えてやれ…よ

なっ?」