名乗られると、にわかに会話が現実味を帯びてくる。 聞き流すわけにはいかない。 (連絡って、何だよ……何かのエージェントかよ……) 繁徳の反応を窺うと、ちずこと名乗る老婦人は、腕に下げた小さな銀色の手提げ袋の内ポケットから、慣れた手付きで何かを人差し指と中指に挟んで取り出した。 薄紫色の名刺が繁徳の前に差し出される。 その指先には、薄ピンク色のマニキュアが綺麗に施され、所々に銀色の星が散りばめられている。 どこまでも派手な婆さんである。