幸子の作るオムライスは美味かった。



「最近発見したんだけど、このインスタントのハヤシライス、結構美味しいのよ。

昼、一人の時、食べたんだけどね」

そう言いながら、幸子はレトルトのハヤシライスの封を切った。

「これを、オムライスのソースにすると、簡単にデミグラオムライスの出来上がりよ。

ほらね」

幸子はオムライスの周りに、温めたハヤシライスを回しかける。

幸子のオムライスは、チキンライスの上に半熟のオムレツを乗せた独特の形なのだ。

オムレツを崩しつつ、チキンライスとデミグラソースを絡めながら食べる。


(嗚呼、美味い)


繁徳が幸子の温かい料理を食べるのは久しぶりだった。

最近はバイトで帰宅時間が遅いというのもあったが、二人向かい合って食事をするのが気まずくて、冷めた料理を一人で食べていた。

繁徳が一人で食べていたということは、幸子も一人で食べていたのだ。

久しぶりの二人の食事。

夢中でオムライスを頬張る繁徳を、幸子は自分の食べる手を止め、じっと眺めていた。