パリに着いてどうしたかって?

まずは宿を探したさ。

東京で色々聞いておいたのが結構役にたってね。

シャワー付のワンルームだけど、家具付のアパルトマンに落ち着いた。

とりあえずは一息ついたけど、その先がいけないよ。

すぐにホームシックにかかっちまった。

日本が恋しくてね。

そりゃ、フランス語も少しは勉強してさ。

けど、早口の生の言葉はほとんど聞き取れやしない。

会話が続かないのさ。

挨拶かわすくらいの人間関係だけじゃ、寂しくて居た堪れなかった……

どうしたかって?

で、あたしは歌の仕事を探しに夜の街へ出た。

だって日本に帰るわけにはいかないだろ、兎に角前に進まなきゃなんなかった。

東京で歌ってたナイトクラブみたいなさ、『キャバレ』ってやつがパリにはあるって聞いてたからね、それを探しに出かけたのさ。

なんか、やばそう? だって?

日本のキャバレーとはちょっと違うよ。

『キャバレ』ってのはね、歌を聴きながら、食事をしたり酒を飲んだりするダイニングバーみたいなとこなのさ。