「何だかあいつ、凄く緊張してるらしくて……」

舞が心配で、繁徳も落ち着かない。

「みたいね」

そう言ってクスリと笑う綾を見て、繁徳は気持ちを切り替えようと話題を変えた。

「あの……、千鶴子さんの手術のこと、何か聞いてますか?」

「昨日のカテーテル治療のことなら、成功だったらしいわよ」


綾の口調は、落ち着いていた。


「そうか、良かった」

「血流は正常に戻ったから、後は様子を見て自宅療養ね。

でも、今後は無理は禁物ね。

きっとステージは無理だわ……」

「僕の祖母も心筋梗塞だったんで、だいたい解ります。

安静が大事なんですよね」

「ステージが無くなると、父が淋しがるわ……

七年前の発作の時の父の慌てようを見ていたから、今回もどうなることかとホント、ヒヤヒヤしたわ。

父はね、千鶴子さんに惚れてるの。

これ内緒よ」


綾は、人差し指をそっと唇にあて、そう囁いた。


(そんな秘密の話、俺に言われても……、困るよ……)


真面目な顔で自分を見つめる綾に、繁徳は何故か近しい気持ちを感じていた。