(不安なんだな、舞)


俺がしっかりしなくちゃいけない、と繁徳は思った。


「シゲ、水曜のレッスン、付き合ってくれない?

千鶴子さんのマンションで増田さんと二人きりって、ちょっとね」


舞の声が少しだけ明るく響く。

必死に気持ちを切り返そうとしているのがわかった。


「そうだな、いいよ」

「じゃあ、三時ね」

「オッケー」


一つずつ、舞の不安を解消していくしかないな、と繁徳は考える。

今の自分に出来るのはそんな小さな支えしかないから。


「そろそろ、行くか」

「そうだね、五時半か、遅くなっちゃった」


二人は立ち上がると、通りを目指して歩き出した。

繁徳は手をそっと舞の肩に回す。

舞が繁徳を上目使いに見上げる。

繁徳は舞の肩を抱く手に、少しだけ力を込めた。