繁徳はエレベータの中、亡くなった祖母の姿を想い出していた。
時折苦しそうに胸を押さえ、薬を飲んでいた、今にも消えてしまいそうな小さな後ろ姿。
(千鶴子さんも、あんな風になっちまうのかな)
突然、腕に舞がしがみ付いてきた。
「どうした、舞」
見ると、舞は血の気が引いたようにぼうっとして、目を真っ赤にして涙をこらえている。
繁徳は、舞の肩をきつく抱いた。
「大丈夫だよ」
一階で扉が開く。
舞の異様な状態に気付いたのか、薄水色の制服を着た女性が声をかけてきた。
「彼女、大丈夫?
気分が悪いのかしら……」
「いえ、知人のお見舞いに行って、ちょとショックを受けたらしくて……」
「どちらにしても、少し休んだ方がいいわね。
この建物を出て、敷地右奥へ行くと診療棟があるの。
その一階には待合のロビーがあるから、そこで休んだらどうかしら」
「ありがとうございます」
繁徳は、女性に軽く頭を下げると、舞を抱きかかえるように支えながら歩き出した。
彼女に言われた通り、診療棟の待合ロビーを目指す。



