「明日、カテーテル治療を受けるつもりだよ。
来週には退院できると思う。
だから、舞さん、あんたは安心して練習を続けるんだよ。
水曜日のレッスンはあたしのマンションで、あたし抜きで、いいね」
「でも、千鶴子さん……」
「増田にはよく言ってある。
あたしの時間も少なくなっちまったがね、あんたにとっての時間も限りがあるってことを忘れちゃいけないよ」
病室のドアが軽くノックされ、高木が入って来た。
「そろそろ、時間です。
明日手術だし、疲れるといけませんから」
「手術って、千鶴子さん……」
「カテーテル治療は手術とは言えないよ、少なくともあたしにとってはね」
「岩下さんはバイパス手術をお受けになってらっしゃるから、そう思われるのも無理もありませんね。
カテーテルは安全ですし、短時間で済みますから。
でも、体調管理は万全でないといけませんよ。
さあ、そろそろ夕食の時間です。
少しは召し上がって、早くお休みにならないと」
「ウララさんの言うことは絶対ですからね。
はいはい、従いますよ」
千鶴子が、ちょっと突き放したように言い返した。
「でも、来週には退院しますから、そのつもりで」
「そういう気持ちがあれば、可能ですよ、何事も」
二人は何だか、静かに笑い合っているようだ。
(ウララさんって言うのか、あの看護婦さん)
その響きが、彼女にぴったりだと繁徳は思った。



