もてまん


二人は、恐る恐る千鶴子のベットに近寄った。

ベッドに横たわる千鶴子は、いつもよりずっと小さく見えた。

長い髪を両脇で三つ網に束ね、口元には酸素マスクが当てられていた。

身体からはコードがいくつも延びて、機械に繋がっている。

二人が近づくと、千鶴子は弱弱しく右手を上げて、口元のマスクをはずそうとした。


「千鶴子さん、これ、取っていいの?」


舞が心配そうに尋ねる。


「こんなの付けてちゃ、しゃべれないじゃないか……」


千鶴子の声がマスクの中からくぐもって聞こえた。


「十五分だけだよ、かまうことないさ」


舞が手伝って、やっとのことでマスクが外れた。


「先ずは、ありがとうね。来てくれて嬉しいよ」

「千鶴子さん、僕達が来るの、分かってたんでしょう?」

「そろそろ、来てくれる頃だと思ってね」

「舞が心配してさ、店で増田さんに聞いて来たんだ」

「ざまぁないよ。

自分が年寄りだってこと、ちょっと忘れてたよ。

あんなに気を付けていたのにね、また倒れちまった」


声はさすがに弱弱しいが、千鶴子らしい口調に二人は安堵した。