「少しだけ、会っても構わないでしょうか?」
「本当は、駄目なんだけど。
少しだけなら……
でも、何か状態が変だと思ったら、躊躇なく呼び出しブザーを押すこと。
約束できる?」
「はい、約束できます」
繁徳の隣りで舞が力強く声を発した。
彼女が優しく頷く。
「じゃあ、二人とも、あたしの後に付いて来て」
繁徳は咄嗟に彼女の胸元のネームプレートを見た。
〈高木麗〉
(タカギレイ?)
女優みたいな名前だと、繁徳は思った。
でも、実際の彼女はがっちりとした体格で、顔付きもごつく、頬骨の張った、一見恐そうな女性だった。
そのギャップに繁徳はちょっと可笑しくなる。
そのまま繁徳は隣の舞を見る。
緊張が解れたのか、舞は静かに頷いて歩き出した。
繁徳も後に続く。
高木は、ナースステーション前で立ち止まると、二人を片手で制止した。
「主任、戻りました。交代します」
彼女がステーションにいる誰かに声をかけると、パタンと小さくドアの閉まる音が聞こえた。
そして、二人を手招きしながら歩き出す。
舞と繁徳は小走りでその後に続いた。



