「あっちの建物だね」
案内版を見ながら、舞が指差した。
「何言ってんだよ、舞。
こっちだよ。
こっちが西」
「え、そうなの?」
(女ってのは、ホント方向音痴だよな。母さんも然り、舞も然りだ)
今度は繁徳が舞の腕を引っ張って、西Bの建物に向かう。
ロビーの時計は、四時少し過ぎを指していた。
二人はエレベータで五階まで上って降りた。
繁徳は、エレベーターホール壁に掲げてあるフロアの見取り図を注意深く確認する。
ナースステーション右奥から1・2・3と番号がふってある。
ナースステーション前が丁度10、五一〇号室。
病棟の造りが同じだとすれば、六〇八はナースステーション前方すぐ右側だ。
千鶴子の病室はナースステーションから近く、階段からは遠い。
(タイミングを見計らって、滑り込むしかないな)
繁徳は、そう算段した。



