だが、二人並んで釣り糸を垂れていると、何時も決まって繁徳の方に良く魚がかかった。

その様子を見て、

『繁徳は糸を引くタイミングが良いのかな、一種の才能だな』

と、正徳はいつも感心したようにそう言った。


「ほい、繁徳」


正徳が準備した釣竿を繁徳に手渡した。


「うん」


繁徳は正徳に続いて、海に向かって釣竿を振り上げる。

遮る物のない、海の日差しは眩しい。

海風が心地よく吹いてきて、少し汗ばんだ首元を冷ます。


「父さん、最近忙しいね」

「あぁ、そうだな」

「土日も出勤の日、多いよね。母さんが心配してたよ」

「あぁ、そうだな」

「仕事じゃなくて、どこか他のところへ行ってるんじゃないかって」

「えっ……」


と、正徳が繁徳の方を振り向いた。

その顔は、どうやら動揺を隠せないらしく、歪んでいた。