(俺、行けるって言ったかな?)


受話器を耳に当てたまま、繁徳は首を傾げた。


(畜生、断る暇もなかったよ。だから年寄りはいやなんだ。言いたいことだけ言うからな)


繁徳は千鶴子の言いなりになった状況に腹が立ったが、断るためにまた電話をかけるのも気が乗らない。

そうこうするうちに土曜がきて、繁徳は何だかこの日を楽しみにしている自分に気付くことになる。


(取って食われるわけじゃなし。上品そうな婆さんだし……)


繁徳は浮き立つ気分の理由を、自分では見つけることができなかった。

が、確かに、突然の出会いからこっち、いつの間にか、あのぶっ飛び婆さんが気になって仕方がなかったのだ。


いったいどんな人物なのか、どんな興味を自分に抱いているのか、知りたくてたまらくなっていたのである。