「ただね、うちの店はさ、アルコールも出すからね。

あんた達、未成年だろ?

なるべく早めに来て、遅くならない内に帰ることだね。

食事はあたしのおごりだよ、何でも好きなもの頼んでいいよ、アルコール以外ならね。

で、帰りは、繁徳、ちゃんと彼女を家まで送ること。

これだけは約束だよ」


そして今度は舞に向かって、やはり威厳を持ってこう言った。


「それと舞さん、あんたは、あんまりちゃらちゃらした格好をしてこないこと。

目立つと、絡まれるからね」

「絡まれるって……」

「声かけられたりするってことさ、あんた可愛いからね。

まぁ、あんまり深く取らずに、軽い気持ちで聴きにきておくれよ。

それから……

あたしゃ、来週のそのステージを終えたら、二週間ほど旅行に出るつもりだよ。

舞さん、その間も鍵預けておくから、好きな時に来てピアノ弾いておくれね」

「あ、ありがとうございます」

「ひとつだけ。

来たら、ついでに、この居間の窓を開けてさ、いる間だけでいいから、少し風を通してくれないかい?」


そう一気に捲くし立てると、千鶴子はポケットから鍵を一つ取り出して舞に渡した。