放課後、職員室で用事を終えて、荷物を取りに教室へと戻る。

ガラガラ、と立て付けの悪いドアをあけて思わず立ち止まった。

中にいた人物が夕日に照らされながらゆっくりとこちらを見る。
その人は、窓の近くの椅子に腰かけ、窓枠に肘をついていた。


「…り…佐伯くん」

そう そこにいたのは李音だった。
思わず、前までの癖で名前で呼びそうになったけれど、苗字で呼んだ。

迷惑…だろうから。


「別に李音でいいけど?
“アキちゃん”?」

でも李音はさも当たり前のように私にそう言った。


昔の呼び名で呼ばれてすごくびっくりする。

もしかして、私のこと忘れて…はいないだろうけど関わりたくないのかな?
と頭の片隅で思っていたから。


「いいの?」
「は?何を?」


避けてたんじゃ…?と小さな声でつぶやくと
李音ははぁっとため息をついた。