捕食者の季節

松下は指に煙管を挟んだまま突っ立っていた

半分ほど燻らせたセブンスターの灰が音もたてずに崩れて落ちた

それでも無言で表情を変えない

北川はずっと考えていた が

『分からない』
それが今の時点では最良の結論だと言えた

同時に
『しかし』
という言葉が北川の脳裏に浮かぶ

現実に次々と
ちぎれた手足が湖上に浮かぶ以上
それを為す何者かが必ず存在するからだ

同じ場所を旋回し続ける北川の沈黙を松下が破らなければ、尚数時間は出口のない思考が続いただろう

『そういえば課長、今日はカミさんと息子さんが来てはるんとちゃいますの?』

『あっ』
北川は弾けるように腕時計を見て声を漏らした