『ほう…』
明瞭な言葉ではなかった

渡辺は壁に向かって歩いていき
幾つかスイッチをいれた


ステンレス台に
複数の光源から照明があたる
『坂本は書類頼む』
松下が肩越しに坂本刑事に支持をする

マスク越しでも
相当な腐臭が鼻孔にささるが気にせず覗きこんだ


『変わった場所やな』

渡辺検視官が言いたいことはすぐ分かった
自分も北川も同じことを感じたからだ

『腕が付いとる?』

『ん…だいたい死体はこういう場所では切断せんからな』

『切り口(切断した道具)はなんですやろ?』

『分からん』

『は?』

『分からんなあ』
渡辺検視官は、やや困惑した表情で
ノギスを細く調節しながら

手首の切断面にあてては
何かファイルに記入していた