『問題は―』
遅れて現着した北川に
松下が報告する
『凶器ですな。損壊に使うとる道具、何ですやろな』
松下はグローブのように膨らんだ左手首を足元に
北川に問い掛けた
『…』
黙って手首の切り口を眺めている
構わず松下が尋ねる
『けったいですやろ?手首ちゅうても肘から先5センチくらい…』
―それより
『これ、ノコとちゃいまっせ』
北川も同じ事に気付いていた
『ノコギリで切断したというより…』
―押し切った
北川の感じた第一印象は松下のそれと同じだった
白手袋の上から
半透明のビニールの手袋を重ねて
松下はクーラーに慎重に手首を入れる
切り口をまじまじと眺めて
もう一度
『なんやろなあ』
余りこういう現場に慣れない坂本刑事が
眉間に皺を寄せて眺める隣りで
松下は間延びした声で呟いた
『損壊器具の特定もしくは推定願います』
それだけ告げると
北川は―その他の部位―捜索の指揮を取るため
現場に着いた移動交番に向かって行った
いつの間にか自分が
ひどく汗ばんでいたことに松下は気付いた
短い湖北の"春"が近付いている
遅れて現着した北川に
松下が報告する
『凶器ですな。損壊に使うとる道具、何ですやろな』
松下はグローブのように膨らんだ左手首を足元に
北川に問い掛けた
『…』
黙って手首の切り口を眺めている
構わず松下が尋ねる
『けったいですやろ?手首ちゅうても肘から先5センチくらい…』
―それより
『これ、ノコとちゃいまっせ』
北川も同じ事に気付いていた
『ノコギリで切断したというより…』
―押し切った
北川の感じた第一印象は松下のそれと同じだった
白手袋の上から
半透明のビニールの手袋を重ねて
松下はクーラーに慎重に手首を入れる
切り口をまじまじと眺めて
もう一度
『なんやろなあ』
余りこういう現場に慣れない坂本刑事が
眉間に皺を寄せて眺める隣りで
松下は間延びした声で呟いた
『損壊器具の特定もしくは推定願います』
それだけ告げると
北川は―その他の部位―捜索の指揮を取るため
現場に着いた移動交番に向かって行った
いつの間にか自分が
ひどく汗ばんでいたことに松下は気付いた
短い湖北の"春"が近付いている
