加藤の携帯が鳴ったのは
日がとうに傾いて

辺りが暗くなり始めた時分だった

『ヒロ、今日は悪かったな』北川のいつもと変わらない穏やかな声がした

『県警本部から署に帰る前に交安協に寄り道してたんだ』

『また義父さんか、お前また依ちゃんを怒らせたのか?』
こういう
親友の"鋭い"ところが
―好きになれない

と北川は思う

『まあな。いきなりの所轄署への移動だったからな』


『お前、今夜時間あるなら久し振りに飲まないか』
旧友を誘いながら加藤は
―また余計なこと言ってしまったな
そういう意味の苦笑いをした