北川達明が警察官になったのは
保がそれを望んだからだ

依子は父親が
それを二人の結婚の条件にしたことを
今も許せないでいる


達明はといえば
自他共に"甘い"自分が
義父の期待に応えるような刑事などに
なれるはずがない事はとうに自覚していた

しかし
―案外退屈じゃない

とも思っている。

『いきなりの転任でしたからね。でも大丈夫ですよお義父さん』
裏表の無い北川の笑顔を見るたび

―依子には出来過ぎた旦那だな
と保は思う。

自分のせいで
達明の人生を変えてしまったのかも知れない

最近
娘と電話で話す度
義父はそう考えるようになっていた