『まあ…いずれにしても、事故とするよりないですね』

北川は
そういうよりない。
それは

本心かと言えばもちろん違った。


―何か腑に落ちない

そんな気がして仕方がなかった。
それは"胸騒ぎ"のようなものでしかなかったが。


松下は刑事課課長の
―事故として処理する―という言葉に
内心『安堵』した自分を自覚していた。


現在
松下警部補は所轄で発生している
振込詐欺
いわゆる『オレオレ詐欺』の専従捜査で

正直手一杯だった

おりしも
県下一斉の、捜査・摘発強化中であり

来週末には捜査状況の報告会議が控えている。


こんな『得体の知れない』事故に
拘らっている時間的余裕が

そもそも無かった。