―色がない―という意味のことを松下が指摘した。

『ええ、ありませんね』

北川も同じ事を感じる。

船が衝突したなら
ぶつけた側の塗料が当然付着する。

淡水
海水問わず
こういう船舶は、貝類や藻を防ぐためや
もちろん外板自体を保護するため

必ず塗装をしてある。

したがって
他の船舶がこのバスボートに接触したなら
当然何らかの塗料が付着している

はずだった。

それが

全くなかった。

『これFRPか何かですよね?』
『松下さん、こんなふうにツプれることあります?』

壊れた船尾を睨みながら
北川が尋ねる。

『いや、ワシは初めて見ましたわ』