僕の彼女は苺味




ドアの隙間から荒れた部屋が見える。



「そのままだよ。これ全部杏奈ちゃんにあげる。」


「え、これ貰い物…ですよね?」




気にしない




「うん。まぁ、そんなとこ。」


「じゃあ貰えません…っ!」




気にしない

気にしない

気にしない………。




「ねぇ……………」


「はい…」


「杏奈ちゃんさ………」


「ど、どうかしましたか!?」



まだ渇ききっていない涙の跡を慌てて拭き取ろうとする手を掴むとバサバサッというお菓子の落ちる音。



「離してください……。」


「やだ。」


「どうしてですか?」


「別に。なんとなく。」


「なんとなくって…、そんな適当な……」



再び溜まっていく涙。



涙なんて見慣れてる。


関係を切りたいと告げる度に泣いてすがってくる惨めな女の姿を飽きるほど見てきた。



関わらない方がいいことくらい分かってる。


僕の経験が言ってる。






それなのに。



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