意味が分からないと両手を上げるジークは溜め息を吐く。
「それは誰の言い付けです?」
「我が主ローグ様直々の御命令です」
「そうですか。では、その命令にシェイラお嬢様は何と?」
「それは……」
兵士の雇い主はベイン・ローグ。
主の命令に逆らう事はできない彼はジークの道を塞ぎながら答えるが、ジークの問いに途中で言葉を詰まらせた。
「此処、スウィール国の王女、シェノーラ・フィール・ラグナー様の意志は通らない訳ですか?」
「………」
シェノーラの意見を聞かないローグ達に苛立ちを覚えながら兵士に言うと、兵士は突然黙り込んでしまった。
助けを求めようにも側に誰もいない為為す術のない彼は顔を伏せる。
すると、数人の声と屋敷の扉が開く音が聞こえた。
「直ぐに戻るが、留守の間任せる」
「お気をつけていってらっしゃいませ、ローグ様」
玄関から出てきたのはローグ。
彼は侍女達に見送られながら2人の兵士を連れ門へと歩いて来る。
ローグの姿を目にした瞬間、門番の兵士は助かったと言葉を漏らすと頭を下げた。
「ローグ様、彼が屋敷に通せと……」
そう言い振り返るが、先程まであったジークの姿は何処にもない。
辺りを見渡す兵士にどうしたのかと問うが、兵士は何もないと言い彼等を通した。
「誰も此処を通すな」
何かを言いかけた兵士を不信に思い、念をおすように言うと馬に乗り屋敷を後にする。
「何が誰も通すなですか……」
ローグの姿を目にした瞬間、物陰に隠れたジークは遠ざかるローグの姿をじっと見つめる。
鋭い眼差しを向けるジークは彼の姿が見えなくなるまで無言で睨み続けていた。

