夜の屋敷を歩くローグは、最上階にある部屋の前で立ち止まると扉を叩く。
部屋の中は灯りが点っている為、人がいる事はわかっている。
しかし返事はない。
ローグはもう一度扉を叩くと鍵のかかっていないその扉を開き、部屋の中へと入っていった。
広い部屋の中には栗色の髪をした女性が1人、椅子に腰掛け窓の外を見つめていた。
暗闇で何も見えない外を眺める彼女はローグが部屋に入ってきた事に気づいていないのか振り返る事はない。
そんな彼女に歩み寄るローグは椅子を動かし彼女を自分と向き合わせる。
「シェノーラ」
「……」
膝を付き目線を合わせ彼女の名を呼ぶが、シェノーラは何の反応も示さない。
感情のない瞳で只目の前を見つめ、死人のように動かない。
侍女のリリアを失って以降、心此処に有らずといった様子の彼女。
食事も取らず、痩せていく彼女を周りの兵士や侍女は心配していた。
「……何故だ………」
彼女を見つめるローグは反応のない彼女に不満を抱く。
「何故私を見ない!?」
こんなに君を想っているのに、何時も君は他人を見てばかり。
だから邪魔なものは全て奪った。
自分の想いを邪魔するもの全てを。
ローグは彼女の細い腕を掴むとベッドに突き飛ばす。
意識があるのかもわからない彼女はそのままベッドの上に仰向けに倒れた。
「邪魔者は誰もいなくなった……お前は私だけを見ていればいいのだ……」
彼女の上に馬乗りになるローグは綺麗な長い髪を優しく撫でる。
その指は柔らかな頬に触れ、彼女の細い首を掴んだ。
「なのに、何故私を見ない!?」
目の前には私しかいないのに、君は未だに私を見ない。
その澄んだ瞳にはローグの姿を映す事はない。
それが悔しくて、憎くて、苦しくて…
細い首を掴んでいた右手にもう片方の手を添えると両手に力を込めた。

