Blood†Tear


煌めく刃…
見開かれる瞳…

振り下ろされた短剣は風を切り、動けない彼女を襲う…

コウガは助けに入ろうと地を蹴るが、間に合わない…


拳を握り、見開いた瞳を力強く閉じた…





 「…っ……」


 「いつまで耐えられるか、楽しそうだからまだ生かしておいてあげるよ」


短剣は彼女の喉元ギリギリの所で停止していた…


突きつけられた冷たい刃…
緊迫感に息を呑む…
すると鋭い痛みが走り、ツっと赤い液体が伝っていった…



虚ろな瞳の彼女に顔を近づけ、不気味に笑う…

そして黒いフードを目深に被り背を向けた…




 「……待…て……!」


苦しそうに息をしながら、逃がすまいと地を這い蹲る…



 「今殺す事もできる。でも、今回は見逃してあげるって言ってるんだ。
せいぜい足掻きなよ、哀れな死神」


肩越しにそう言うと、嫌みに微笑み姿を消した…




クレアは悔しそうに唇を噛み、力強く地を叩く…

そしてフラフラとしながらも立ち上がると、男性の消えた方向へと歩きだした…


だが、頭がボーッとして、景色が歪む…
周りの音が聞こえなくなり、バランスを崩すと遂に意識を失った…



 「…っと……」


近くにいたコウガが、倒れ行く彼女を支える…

大丈夫かと声をかけるが意識はない…
だが、息はあるようだ…

体は傷だらけで、真っ赤な血が溢れていた…
肌は冷たく、血の気がないように青白い…


そんな彼女を背負うと、安全な場所へと運ぶ為歩き出す…



 「こいつ、『赤目の死神』じゃねぇか?」

 「赤目の、死神?」

苦しそうな彼女を見ながらレオンは呟く…

彼の言葉にチラリと視線を移すコウガ…



 「あぁ、禁忌を犯した一族…人を喰らうその一族を皆殺しにした、巨大な鎌を持つ少女…」


血のように赤い瞳…
サラリとした長い銀髪…
そして、身の丈程ある巨大な鎌…

全てが話と一致する…



 「…一族を殺したかもしれない…でも、そうするしかなかった…それが、唯一の最善策だったんだ、きっと……」


俯き加減にそう呟くと、足早にこの場を後にした…