変わり映えの無い青い空。
争いが繰り広げられた町中とは打って変わり、其処は長閑な時が流れていた。



無事宿へとたどり着いたレグル。

彼は入り口付近に座り込むクレアを発見し歩み寄る。




 「おい、しっかりしろ」


 「……」


全身血塗れで眠るように瞳を閉じる彼女。

確実に危険な状態であると判断し、肩に手を添え軽く揺すり頬を叩く。


すると彼女はゆっくりと瞳を開け、ぼやける視界をレグルへと向けるが、彼を瞳に映すと再び目を閉じた。




 「おいクレア……」


重症の様子だが、微かに意識はあるようだ。


一旦部屋まで運びそれから処置をするのが適切だと、彼女を抱える為手を伸ばすが、何かに気づき振り返る。




 「…酷い怪我ですね……直ぐに治癒します」


レグルの隣に膝を折り、クレアの様態を確認したのはシェイラ。


彼女は難しい顔をしながらも、両手をクレアへとかざし治癒の力を駆使する。




 「この怪我でまだ生きていると言うのが不思議ですね。流石死神と言った所でしょうか」


腕を組みその様子を見守るジークは言葉を漏らす。


彼の服は血で染まっているが、既に傷は完治している様子。

シェイラにより治癒を施されたのだろう。




 「…これで大丈夫です」


暫くしてクレアの治療は終了した。


未だ目を開ける事無く眠り続けるが、大分顔色も良くなり痛みに顔を歪める事も無い。


次いでシェイラはレグルと向き合い彼の腹部へと手をかざす。


彼の傷も治癒しようとするが、彼は伸ばされた彼女の腕を掴む。




 「無理をするな。俺は問題無いから」


優しく声をかけ制止する。

彼女にその力を使わせたくないから。
これ以上、彼女が何かを失うのは嫌だから。


しかし、彼女は首を横に振り柔らかく微笑んだ。




 「私なら大丈夫です。ですから、治療させて下さい。貴方の力になりたいのです」


そう言う彼女の腕は彼の手から離れて行く。

まるでその手から逃がれ、触れる事を許されぬもののように。