その場から一歩も動かず、飛んでくる短剣をジッと見つめるクレア。
軌道を変える事の無い短剣はそんな彼女の頬を掠り地に落ちた。
頬を伝う血を拭おうとはせず、彼女はフリードの姿を瞳に映す。
「…この罪を忘れる事などできない……私は、この罪を背負い、罪を償う為に生きると決めたんだ……」
「罪を償う?生きる事で償えるとでも?」
「償えないさ……この罪は、何をしたって消える事はない……一生この身に背負い続けなければならないものなのだから……」
悲しそうに細められたその赤い瞳を目に、フリードは何か言おうと口を開くが直ぐに閉じられた。
「私が生きる事など許される筈もない。そんな事位分かっている。でも、それでも私は、自ら奪った一族の分まで、彼等の成せなかった事を彼等の代わりに成し遂げたい。私達のような一族にも、この世界に居場所があるのだと言う事を示したいんだ……」
「…善人ぶるなよ…この死神が!」
怒鳴り声と共に宙に浮く短剣は動きを見せる。
クレアの心臓目掛け一直線に飛んで行くが、それは意図もたやすく弾かれた。
全ての短剣を叩き落としたクレアは地を蹴りフリードとの距離を縮めると、彼の1メートル程手前の地についた左足を力強く踏みしめ鎌を振り下ろす。
その攻撃を手にした短剣でいなすフリードは後ろに後退。
追って来ないよう数本の短剣を操りクレアを襲わせる。
「お前は人殺しなんだよ…お前のその手は、その身体は、拭えきれない程の血で汚れている……そんなお前が綺麗事なんかたたくんじゃねぇ!」
地に転がっていた短剣全てが宙に浮き、切っ先はクレアに向けられる。
合図があれば直ぐにでも斬りかかれるよう待機する。
「血塗れたお前は幾ら光に焦がれようと闇から這い出れる事など不可能……その鎌を振るい人を殺し続ける事でしか居場所を見いだせない……狂気なお前は、闇に生きるお前は、俺を殺して死ぬしか術が無いんだよ!」
彼が言葉を発し終えた瞬間、待機していた短剣は弾かれたように宙を舞う。
声を荒げる彼の心を表すように乱暴に、短剣は空中を暴れまわった。

