猛スピードで振り下ろされた刃。
それは獲物を捕らえ斬り裂いた。
刃先は赤く染まり、散った鮮血が頬を汚す。
「ん?」
確かに刃は肉を斬り、生暖かい鮮血も地に舞った。
しかしフリードは目を細め、まだ息のあるクレアを見下ろした。
「…死ぬ訳には…いかない……」
ぼそりと呟いたクレア。
振り下ろされた短剣の刃を右手で掴み、心臓を貫かれるのを防いだ彼女は更に力強く刃を握る。
深く刃が食い込み溢れ出る血が雫となって落ちてゆく。
「…死ぬ訳には、いかないんだ……!」
自分に言い聞かせるように同じ言葉を繰り返した彼女はフリードから短剣を奪い彼の腹を蹴る。
不意打ちを食らった彼はその蹴りを受け後ろに後退。
奪われた短剣を投げつけられるが、身を捻りそれを回避。
クレアへと目を向けると、彼女は身体に突き刺さる短剣を引き抜き立ち上がっていた。
「血に狂ったか……?」
フリードは眉を潜め呟くが、銀髪から覗く瞳を目にして確信する。
彼女は血に狂ってなどいない。
未だ正気を保っていると。
普段と違う彼女の様子に何か危険を感じ、彼は後ろに飛躍すると彼女との間に距離を取る。
フラフラと歩くクレアは地に突き刺さる鎌を握るが、その柄を掴む事ができない。
左手は風穴があき、右手は深い傷を負い腱が切れている。
指が動かず力が入らない。
舌打ちをする彼女は服の袖を破ると右手と鎌に巻きつけ、結び目を作ると布の端を噛み締め付けた。
鎌と右手を固定した瞬間に飛んできた短剣。
それを一振りした鎌で弾き返すとフリードを睨む。
「死ぬ訳にはいかないだ?お前、頭でも可笑しくなったか?」
数本の短剣を宙に待機させる彼は馬鹿にしたように言い、傍の短剣を一本掴む。
「その手で一族を滅ぼしておいて、お前はその罪を忘れ1人生き残るつもりか!?」
クレアを睨み低い声で言う彼は、握った短剣を彼女に向かって素早く投げつけた。

