地につけた手は泥を掴み力強く握られ、激痛に耐えるクレアは肩で大きく息をする。
ポタリと落ちるのは汗では無く、何処からか溢れ流れた真っ赤な鮮血。
尋常ではない量の血が流れ、乾いた地面はそれを吸い込み色を変える。
その光景を見下ろしていたフリードは屋根から飛び降り、苦痛に耐えるクレアに歩み寄った。
「痛いか?苦しいか?」
目の前に屈み、彼女の髪を掴むと顔を上げさせる。
苦痛に歪めるその顔が露わになり、フリードは目を細め口の端を吊り上げた。
「命乞いでもしてみるか?助けてくれって、泣き叫んでみろよ」
何時も強気な彼女が涙を流し、助けを請うその姿が見てみたくて、フリードは短剣を彼女の頬に添え悪戯に笑う。
しかし、クレアは命乞いするどころか憎らしげに彼を睨み、嫌味なその顔に唾を吐いた。
「…誰が泣き叫ぶか……このゲスが……」
未だ強気に振る舞い汚い言葉を吐く彼女だが、その態度がフリードの怒りを買う事となった。
腹を立てたフリードは彼女を突き飛ばし、仰向けに倒れる彼女の腹を乱暴に踏みつける。
「調子にのるなよ、血に狂う死神の分際で……」
「っ……」
全体重をかけ何度も踏みつけるが、彼女は助けてのたの字も口にしようとしない。
血を吐きながらも必死に耐え、見下ろすフリードを睨み続ける。
「そんなに死にたいのなら、今すぐ楽にしてやるよ」
強情な彼女に呆れ溜め息を吐くフリードは、短剣を指先でクルリと回し遊ばせる。
左手を振り数本の短剣を操ると、逃げる事のできないように身体に短剣を突き刺した。
「安心しろ。お前の友達も、直ぐに同じ所に連れて行ってやるよ」
その言葉に目を見開くクレアを見下ろし笑みを浮かべると、地に垂直になるように持った短剣を身動きの取れないクレアの心臓目掛けて振り下ろした。

